子どものネット安全教室

子どもをオンラインゲームの危険から守る：親が実践すべき設定と会話のヒント

はじめに：オンラインゲーム利用における親の役割

現代の子どもたちにとって、オンラインゲームは遊びや友人との交流の重要な一部となっています。しかし、その一方で、時間管理の難しさ、不適切なコミュニケーション、高額な課金トラブル、個人情報の漏洩など、様々な潜在的なリスクも存在します。

本記事では、子どものオンラインゲーム利用に関して、親御さんが家庭で実践できる具体的な安全対策と、子ども自身が危険を理解し、安全に行動するための効果的な対話方法について詳しく解説します。忙しい日常の中でも効率的に要点を把握し、すぐに実践できるよう、具体的で実践的な情報を提供します。

オンラインゲームに潜む主なリスク

子どもたちがオンラインゲームを利用する際に注意すべき主なリスクは以下の通りです。これらのリスクを事前に理解しておくことが、適切な対策を講じる第一歩となります。

• 時間管理の困難さと依存: ゲームに熱中するあまり、学習時間や睡眠時間、他の活動が阻害される可能性があります。利用が過度になると、ゲーム依存につながることもあります。

• 不適切なコミュニケーションとトラブル: オンラインゲーム内では、見知らぬ人との交流が発生します。中には、個人情報を聞き出そうとする者、暴言を吐く者、いじめを行う者などが潜んでいる場合があります。

• 高額な課金トラブル: ゲーム内アイテムの購入やガチャといった課金要素は、子どもの金銭感覚では理解しにくい場合が多く、意図しない高額な支払いに繋がるリスクがあります。

• 有害コンテンツへの接触: 年齢制限のないゲームや、ゲーム内のチャット機能を通じて、暴力的な表現や不適切な画像、動画に接触する可能性があります。

• サイバーいじめ: ゲーム内での暴言、嫌がらせ、グループからの排除といった形で、サイバーいじめが発生することがあります。これは子どもたちの精神的な健康に深刻な影響を与える可能性があります。

家庭で実践できる具体的な安全対策

オンラインゲームの潜在的なリスクから子どもを守るためには、デバイスの設定や家庭内ルール作りが有効です。

1. 時間管理と利用ルールの設定

ゲーム利用に関する明確なルールを設定し、家族全員で合意形成することが重要です。

• デバイスの機能やアプリを活用した制限: スマートフォンやタブレット、ゲーム機には、利用時間や特定のアプリの使用を制限するペアレンタルコントロール機能が搭載されています。これらの機能を活用し、利用可能時間を設定します。

  • 具体的な設定例:
    • 特定の時間帯（例：就寝前2時間）のゲーム利用を禁止する。
    • 1日の総プレイ時間を制限する（例：平日1時間、休日2時間）。
    • 特定のアプリの利用を許可制にする。

• 家族間でのルール合意形成: 子どもと一緒にルールを話し合い、なぜそのルールが必要なのかを説明することで、子ども自身の納得感と遵守意識が高まります。

  • ルール設定の例:
    • ゲームをする場所（リビングなど目の届く場所）。
    • 休憩時間の義務化（例：30分プレイごとに10分休憩）。
    • ゲーム中に不快な思いをした場合の報告義務。

2. コミュニケーションとプライバシー保護

オンライン上の見知らぬ相手との交流には特に注意が必要です。

• 知らない人との交流制限: ゲーム内のチャット機能やボイスチャット、フレンド登録について、見知らぬ人とのやり取りは原則禁止とするルールを設定します。どうしても必要な場合は、事前に親の許可を得る、監視下の元で行うなどの対策を講じます。

• 個人情報特定につながる情報の禁止: ゲーム内で本名、住所、学校名、電話番号、顔写真などの個人情報を公開しないよう徹底させます。ゲーム内で親しい関係になったとしても、オンライン上での個人情報の交換は危険が伴うことを伝えます。

3. 課金トラブル防止策

意図しない高額課金を防ぐための設定は不可欠です。

• クレジットカード情報の管理: クレジットカード情報はデバイスに保存せず、必要に応じて毎回入力するように設定します。

• 決済パスワードの設定と管理: アプリストアやゲームプラットフォームの購入には、必ずパスワード入力を必須とする設定にします。パスワードは子どもに教えず、親が管理します。

• アプリ内課金の制限設定: 多くのゲームやアプリには、アプリ内課金自体を制限する機能があります。これらを有効にし、課金できないように設定します。

4. ゲーム内のトラブル対応

トラブルに遭遇した際の対処法を子どもに教えておくことも重要です。

• 不快なユーザーのブロック・通報機能の活用: ゲーム内には、不適切な言動をするユーザーをブロックしたり、運営に通報したりする機能が備わっています。これらの機能を子どもに教え、活用できるようにします。

• 困ったときの相談窓口の周知: ゲームで困ったことや嫌なことがあった際に、すぐに親に相談するよう促します。また、必要に応じて公的な相談機関（例：警察庁のサイバーポリス相談窓口、消費生活センターなど）の存在を伝えることも検討します。

子どもに危険を伝える際のヒントと対話例

子どもが自ら安全に行動できるようになるためには、親からの分かりやすい説明と継続的な対話が不可欠です。

• なぜ危険なのかを簡潔に、具体的な例で説明する: 抽象的な「危ないからダメ」ではなく、「知らない人と話すと、あなたの名前や住んでいる場所を知られてしまうかもしれないから、注意が必要だよ」のように、具体的なリスクを伝えます。

• 一方的な禁止ではなく、一緒に考える姿勢: 「ゲームは絶対にしてはいけない」と頭ごなしに否定するのではなく、「どうすれば安全に楽しくゲームができるか、一緒に考えてみよう」という姿勢で臨みます。

• 困ったときに親に相談しやすい環境作り: 子どもが何かトラブルに巻き込まれた際に、「怒られるから言わない」と隠してしまうことのないよう、何でも相談できる信頼関係を築いておくことが重要です。

• 具体的な対話例:

  • 課金について: 「ゲームで何か買いたいものがあったら、必ずお父さんやお母さんに教えてくださいね。勝手に課金してしまうと、お家の人が困ってしまうことがあります。」
  • 知らない人との交流について: 「ゲームの中には、大人になりすまして悪いことを考える人もいます。もし知らない人から個人的なことを聞かれたり、会おうと言われたりしたら、すぐに私たちに教えてください。絶対に一人で会ってはいけません。」
  • 時間について: 「ゲームは楽しいけれど、やりすぎると目が悪くなったり、眠れなくなったりすることがあります。だから、遊ぶ時間を決めて、休憩もきちんと取るようにしましょう。」

年齢別・状況別の考慮点

子どもの発達段階や利用するデバイスによって、対策の重点は異なります。

• 幼児〜小学校低学年: この年齢では、親の目の届く範囲での利用を基本とし、使用時間やコンテンツ内容を厳しく管理します。ペアレンタルコントロール機能を最大限に活用し、チャット機能などはオフに設定することが望ましいです。

• 小学校高学年〜中学生: 子ども自身のデジタルリテラシーを高める時期です。ルールを守るだけでなく、なぜそのルールが必要なのかを理解させ、自律的にリスクを判断できる能力を育成することが重要です。友人との交流が増えるため、サイバーいじめや不適切なコミュニケーションのリスクについて、より具体的に話し合う必要があります。

• 使用デバイスごとの設定のポイント:

  • スマートフォン・タブレット: スクリーンタイム、アプリの使用制限、課金制限の設定。
  • PC: WindowsやmacOSのペアレンタルコントロール機能、セキュリティソフトの導入、ウェブフィルタリング。
  • 家庭用ゲーム機（Nintendo Switch, PlayStation, Xboxなど）: 各機種に搭載されているペアレンタルコントロール機能で、プレイ時間、コミュニケーション機能、課金制限を設定。

まとめ：安全なオンラインゲーム利用のための継続的な見守りと対話

オンラインゲームは、子どもにとって学びや交流の機会を提供し、デジタルスキルを育む場でもあります。しかし、その利用には常に潜在的なリスクが伴います。

安全なオンラインゲーム利用を実現するためには、家庭内での明確なルール設定と、デバイスの適切なセキュリティ設定が不可欠です。そして何よりも、子どもとの継続的な対話を通じて、オンライン上の危険を子ども自身が理解し、困ったときに親に相談できる信頼関係を築くことが最も重要です。

テクノロジーの進化は速く、新たなリスクも生まれてきます。そのため、一度設定したら終わりではなく、子どもの成長やインターネットの利用状況に合わせて、ルールや設定を見直し、安全対策を継続的に更新していく姿勢が求められます。